「―――あ、……っ」

驚いて何か言おうとするけれど、その時にはもう遅くて。



一瞬の間の後、柔らかな感触がゆっくり私の口をふさいだ。

混乱しながらギュッと閉じた瞼の裏には、クセのある黒髪が揺れていて。

冷たい冬の風にさらされる中、触れられた部分の温かさだけが強調される。

恥ずかしさに逃げたくなって、西園寺くんの腕に手を添え押し返そうとするけれど力が入らない。



どうしよう。

息が苦しくてめまいがするし、何だか涙が出そうな感じがする。

怖い、のかな……。



けれど、昨日とは違う優しい触れ方に、だんだんと怖さより好きという気持ちの方があふれてきて。



「―――寺島」

西園寺くんの呼びかけに、ふと目を開けた。