「―――あのなぁ」

今度こそ、西園寺くんは呆れた様子で私を見た。

「少しは俺の事信じろよな。……まぁ、からかってばっかだったのは認めるけど」

そう言う彼の目には、いつもの様なイタズラっぽい光はない。

信じても、いいのかな?

「アイさんの事は……いいの?」

私は恐る恐るそう聞いてみる。

「いいも何も、亜依の事はとっくに消えてるっつの」

「本当、に?」

「―――ったく、仕方ねーヤツだな」

西園寺くんは困った様子で髪をかき上げると、にらむ様に私を見据えた。

ドキンと、私の心臓が音を立てる。

無言で伸びて来た手にも気付かない程、その視線から目が離せない。



顔を少し上向かせる様に右手が顎にかかり、左手が後頭部に添えられて初めて西園寺くんとの距離が間近になっていると分かった。