朝礼前に教室に戻ると、不審をあらわにした西園寺くんがこちらを見ていたけれど、私は顔を背けて席に座る。

すぐに先生が来て、何も言われなくてホッとした。



けれど、1時間目が終わってすぐ逃げ出そうとした私はやっぱり捕まってしまう。

「……さ、西園寺くん」

「ちょっと来い」

そのまま、強引に腕を引かれて教室を出る。

どこへ行くのかも言われないまま、人目にさらされながら廊下を歩く。

西園寺くんはずっと前を向いたままだった。



その足がやっと止まったのは、校舎裏の端にある大きなモミの木の下だった。

外は寒いからか、辺りには人の気配はない。

「あの……」

何か言おうとした途端、彼はこちらを向いた。