「んだよ、嫌だってのか?」
どこか困ったような声で言われて、私は慌てて首を横に振る。
「いっ、嫌じゃないよ!そうじゃなくて、すぐには信じられなかったというか」
「俺が冗談言ってると思ってんのか?」
「え!冗談……なの?」
思わず不安な顔をしてしまうと、ため息を吐かれた。
「んな事冗談で言わねーから。大人しく寺島は『分かった』って言えばいいんだよ」
「あ、うん。分かった」
命令口調に条件反射のように返事をする。
それからハッと西園寺くんを見上げると、満足そうな優しい笑顔を浮かべていた。
今までに見た中で一番柔らかいその笑顔に、ギュッと心臓が締めつけられてしまう。