「ラッコって器用に貝割るよな」
「見てると面白いね」
さっきから私の手は掴まれたままだ。
触れている部分から、だんだんと温かさが伝わってくる。
「なぁ、付き合おう」
「―――え?」
水槽のラッコを見上げていると、西園寺くんが言った。
他愛のない話の様に言われて、私は一瞬聞き逃してしまう。
「西園寺くん、何て……」
「俺ら、付き合おうって言ったんだよ」
思わず聞き返すと、少し怒った様な声でそう返された。
「付き、合う?」
それでも私は内容が頭に入ってこなくて、西園寺くんの言葉を反すうしてしまう。
付き合うって、アレだよね?
彼氏と彼女になるって事で……、西園寺くんと私が?