「そんな上にウツボいないだろ」

西園寺くんは私が指した方を確かめもせずそう言い放つ。

「……えっと」

私が答えに詰まると、ニヤリと笑ってみせる。

「俺じゃなくて水槽を見ろよ」

「分かってる……よ」

そんな余裕の笑顔で言われると、急に気恥ずかしくなってくる。



大水槽を出た後は、ルートの通りに小さな水槽の列を進む。

個別の小さい水槽には、タツノオトシゴや深海魚などの珍しい魚が入っていた。

「でっかいカニ、美味そう」

「ホントだね」

小学生みたいな言葉に思わず笑ってしまうと、西園寺くんがじっと私の顔を見た。

「な、何?」

聞き返すと、ふいと水槽を見る。

「……次、巨大ダコだってさ」

そう言いながら次の場所に歩いていってしまった。