「……ちょっと寒いな」
急に吹き込んできた冷たい風に、西園寺くんが縮こまる。
私はその頬に、こすった様な傷を見つけた。
「また怪我、してるね」
「あ?まぁ、無傷のヤツはいないだろ」
あの状況では確かにそうだと思う。
「無事だったのって、私とアイさんくらいだよね」
……アイさん、か。
「―――西園寺くんはいいの?アイさんの所に戻らなくて」
自分で口に出して、ちょっぴり心がズキッと痛む。
「戻るもなにも、最初から亜依は五代に言われて俺の所に来たんだしな」
何もなかったように西園寺くんは呟く。
「辛かった、よね」
大事な人が、自分を利用するために近付いてきたなんて。