「―――やめろ」
その時、五代さんの声が静かに響いた。
「え、でも五代さんっ」
「やめろつってんだよ、バカが!」
その言葉に、彼は私を恐る恐る離す。
私はその場にペタンと崩れる様に腰を下ろした。
「遥っ」
陽二さんが駆け寄る。
けれど、
「……どけ」
押しのける様に、その後ろから西園寺くんが現れた。
私の腕を掴み、強引に立たせる。
「……西園寺、くん」
「悪い、後頼む」
西園寺くんは私の方ではなく、羽村さんや嘉川くんの方を見てそう言った。
羽村さんはニヤリと笑って、追い払うように手を振る。
それを確認して、西園寺くんは私の手を引きながら階段を下り始めた。
「西園寺くんっ!」
そのまま、ビルを出る。