「―――っと。よっ、遥……」
振り返った私の目前にいたのは、少し苦笑いを浮かべた陽二さんだった。
「陽二さんっ!―――久しぶり」
「かなり久しぶりだよな」
彼と会うのも、前に羽村さんと一緒に来た時以来だった。
こんな時だからか、声をかけられて嬉しく思う。
「西園寺のヤツが、最近あの女といるっつーのは本当だったんだな」
もう遠くなった2人の後ろ姿を見ながら陽二さんがつぶやく。
「……陽二さん、あの人の事知ってるの?」
私の質問に、陽二さんはちょっと険しい顔をする。
「……まーな。噂ぐらいだけど」
「噂?」
私は知らないけど、有名な人なのかな?