こける寸前、誰かが私の腕をつかんだ。
「―――え」
そのまま、引き起こされる。
「あ……ありがとうございます」
お礼を言って見上げた先にあったのは、西園寺くんのしかめっ面だった。
「っぶねーな」
「西園寺くん……」
久々に間近で見た彼の顔に、私の胸がギュッと締め付けられる。
―――助けて、くれた。
「あの……」
『ありがとう』と続けようとした言葉は、別の声によってさえぎられる。
「玲?どうしたの~?」
甘ったるい話し方。
その途端、私の腕から西園寺くんの手が離される。
「何でもねー」
見ると、そこにはあの彼女。
「あ、玲の学校の子だ。友達?」
「……違う。ただの同じクラスの女」