「ねー、あの人彼女かな?」
誰かが何気なくそうつぶやく。
「え?でも寺島さんは……」
言いかけた1人が、私を見てハッとする。
「あ、ごめんっ」
「ううん、気にしないで!私、西園寺くんとは何でもないしっ」
慌てて否定するけど、何だか虚しい気持ちがよぎる。
本当の事なのに。
ズキンと、胸の奥が痛みを訴えた。
苦しいよ、すごく。
切ないよ、とても。
いつの間にか、私はこんなにも西園寺くんの事を好きになっていたんだなぁ……。
今更ながら、そう感じた。
そばを通り過ぎる瞬間、私は無理やり作った笑顔で友達と話しながらその場を去った。