「うるせーよ。寺島、こっち来い」
西園寺くんに腕を引っ張られて、私は羽村さんから離される。
「ま、取引は成立したみてぇだし、情報が入ったらそっちにも流してやるよ」
最後にニヤリと笑ってみせ、羽村さんは陽二さんと立ち去った。
「……」
さっきから、西園寺くんは黙ったまま歩いている。
難しい顔をしているので私も話しかけられない。
仕方がないので、同じように黙って歩いていた。
家の前まで来た時、思い切って声をかける。
「着いたから……ありがとう」
「ん?……ああ、またな」
「うん。じゃあね」
そう言って別れようとした時、
「―――なぁ」
不意に、声をかけられて私は振り向いた。