「じゃ、とりあえず会えた事だし今日は帰る」

あれから少し他愛ない事を話した後、陽二さんはそう言った。

「あ……はい」

ちょうど駅前近くだし、別れるには良いタイミングだった。

「あんた、じゃないや―――遥、気をつけて帰れよ?」

『遥』と呼ばれてドキッとしてしまう。

普段、女の子と家族以外に名前で呼ばれた事がないから。


慌てて軽く頷くと、陽二さんは眉をひそめて怪訝な顔をした。

「オレが言うのもおかしいけど、遥はもうちょい警戒心持った方がいいな」

「えっ?」