「挟んである用紙に、名前と入店時間を記入して」

 内線で連絡を取った後に、男はA4サイズのバインダーを引き戸から突き出す。


「これが入店証、首にかけて――そこ入ったら右に階段があるから、上がって総合事務所へ行って」


 まくし立てる様に話す――私が聞き直そうとすると――


「行けばわかりますから」

 記入したバインダーをむしり取ると、強く引き戸を閉め、伝票の束を整理し始める――。


 投げやりな男の対応に呆れながら奥へ進む。忙しい時間帯なのか、社員やパート達が倉庫と売場とを頻繁に行き来する――。


 私の前には今日の特売品だろうか、1リットル醤油の半ダース入りの箱が満載したパルテナが10台程置かれてあり、その傍らで、社員らしき男が、年配の女性パートに怒号を浴びせ始めた――。



「何で特売の醤油が売場に出てねぇんだよ。もう売り切れですかって客に嫌味言われたよ――ったくよ、トロいんだよアンタ。どいつもコイツも使えねぇなぁこのバカがっ――つっ立ってねぇで、わかったらさっさと醤油を出しに行けよっ――」

「ったく、俺の責任になるだろうが。評価が下がったらどうすんだよ」