ナビゲーションに導かれ、都心からやや離れ、似た様な一戸建てやマンション群が立ち並ぶ地域にあるスーパーの駐車場に車を駐車し店へと歩く――足取りは重い。

 社長に指示を仰ごうとしたが、外出中で連絡がつかないと秘書が答えた。私がここに来るしかなかった――。


「どうして、こんな場所に――」

 アリスの行動が理解できない。


 レジ袋をカートに載せ、車に積み込み家路を急ぐ主婦達。小さな子供を連れ、急き立てられる様に店に入ってゆく若い母親達――幾つかテナントも入居しているのか、それ目当てに小中学生や女子高生らの群れが、店内に吸い込まれてゆく。入口の前では、無造作に自転車を置き、学生ともつかない若者達が何をするでもなくたむろしている――。


 革製のトートバッグに濃紺のパンツスーツを身に纏った私は、明らかにこのスーパーの客層とは異なる出で立ちだった――。



「いつもお世話になっております。業務推進部の高樹と申します。店長、いらっしゃいますでしょうか」

 商品搬入口兼従業員出入口の詰所に常駐している60歳前後の男性に声をかける。入店方法や文言は、川井出から指示されていた――。