「詩織は絶対に事故なんて起こさないわ――」


 社長が宣言し許可するまではちょっとした騒動になっていた――。


 結果――詩織の行為はヴィーラヴのイメージを更に向上させ、自動車メーカーの安くはない高級ブランドのハイブリッドミニヴァンの販売台数も増えているという――。






 帰路、やはり渋滞に捕まる――街は、ヴィーラヴで彩られている――。


 人々の生活の奥深く潜り込み、人生をも喰い尽くしてゆくのか――。



 私は何を言っているのか――感謝の心を忘れている。今の私やヴィーラヴは、街を行き交う人々の想いによって成り立っているというのに――。





 スマートフォンが鳴った――非通知だったが、路肩に車を寄せ電話に出た。



「もしもし、高樹さんですか――わたくし、ステラ、グリーンヴィレッジ店の店長、川井出(かわいで)と申します――」



「は、はい――どの様な御用件でしょうか――」


「実は、楽杏 アリスさんという方が、当店の商品を精算せずに店外に持ち出し、巡回保安員に確保されまして――――」

「えっ――」



「はぁ――つまり、万引きしたって事ですよ」