他の客から適度に離れた窓際の席に案内される。アリスは両肘をテーブルに突いて、ちょこんと手の平に顔を載せ、人差し指で頬を弾き外を見ている。

 私は、テーブルの中央をぼんやりと眺め、どう話を切り出したものかと考えあぐねていた――。




 ヴィーラヴによる愛の贈り物、ファーストアルバム「セラフィム」のセールス、配信は好調だ――素っ気なく表現しているが、ヴィーラヴにとっての好調とは、軽くダブルミリオン超えを果たし、更に上を伺うという意味であり、世間一般の認識とは異なっている。


 次元が違うのだ――。




 4枚目の新曲の打ち合わせ、取材や撮影等、メンバーそれぞれの仕事をこなし、珍しく夕方には全てのスケジュールが終了したその日、いつもの様に彼女達をマンションへ送る。私の車にアリス、葵、流花、雪が乗り、他のメンバーは詩織の運転する車に乗る。



 プライベートな時間はともかく、仕事上の移動の場合は本来なら運転手をつける所だが詩織は、「私達がイメージキャラクターになっている車を移動時とはいえ、自ら運転せずに宣伝しているのは何か卑怯っぽい」と言い、運転手をつける事を強く拒んだ。