アリスが、私を見る。
まだ、14歳の無邪気で幼い眼が私を見る――が、何処かこの世の出来事を哀れみ、蔑んでいるかの如く、悲しくも見て取れる瞳――。
注文したチョコレートパフェがアリスの前に置かれる――スプーンを器用に回し、紙ナプキンを上手に剥ぎ取ると、嬉しそうに生クリームを嘗める。
私の前には、ホットココアが置かれた。甘い物なんて滅多に口にしないのに、何故オーダーしてしまったのか――。
わかっている――数時間前に起きた事実を考えれば、心が、体が、本能的に甘みを要求するのも無理はない。
あのまま、マンションに送る気になれなかった私は、「甘い物でも食べない」と口実を作り、目についたファミリーレストランに車を向けた。店内には、片手の指で数えられる程度の客が、ぽつり、ぽつりと散らばって座っている――。
「あれ、そうだよな――」
「マジ、本物だよ――」
客達の囁き声が聞こえる――自分がその対象でもないのに私は俯き、店員の後に続く。アリスは、気づかれて当然とばかりに堂々と歩く――――アリスの全身から放たれるオーラが、閑散とした店内を覆ってゆく――。