「勝手に撮らないで下さいっ――」

 なんて人――他人の領域に何の断りもなく侵入し、私の一部を切り撮る。周りを見渡せば、物欲しそうな顔をしている女はいくらでもいるのに――。


 何故、私なの――。


 画像を消去させようと、彼との距離を縮める。「物欲しそうな女」などという言葉が、自分の感情から湧き出るなんて、ありもしない事に困惑していた。


「消去して下さいっ――」

 強い口調で詰め寄った私にも、「まぁまぁ」とたじろぐ事もなく彼は丁寧な動作でカメラのモニター画面を私に差し出した。


 紛れもない――私だ――。


 この小さなモニター画面にいる私が、私の本質を焙り出している事を本当に彼は信じていたのだろう。



「何故だろうか――」

 罵声を浴びせようと準備していた思いと、勢いに任せて彼の頬を張ってやろうと神経を研ぎ澄ました右腕――。

 その行為が全て白紙になってゆく――。



 こんなにも、感情が表面に現れたのはいつ以来だろう。幼い頃から、表に感情を出す性格ではなかった筈なのに――――。


 彼が、私の性質を狂わせているのか――。


 わからない――――。