砂漠以前の原石達は、自身の苦悩や嫉妬そして、涙――――それらを躊躇なく世間に晒し、表現するスキルを常に求められていた――。
世間も「わかっていて」原石達が起こす現象を自らの日常と同化させ、涙する――。
彼らに研磨され、自信と信頼を得て、やがて恍惚な光りを放つ「希少石」へと変貌を遂げた花達の創りだす幻想を世間は楽しみ、渇いた心を満たし、共有し合った――。
「でも、ヴィーラヴは違うわよ――」と社長は自慢気に続けた――。
ヴィーラヴなる原石は、最初から優秀な鉱山で採掘され、革新的な研磨とカッティングを施し、上質なプラチナの台座に丁寧に乗せられ、ダイヤモンドさえも脇石に追いやり、インクルージョンの全く存在しない至高の煌めきを放つ宝石華となって、私達の前に咲き誇った――――。
同化と共有には程遠い存在――――しかし、彼らには寧ろ都合が良かった――原石達を研磨し、成長物語を共有し「虚構」体験を喜ぶ程、もう生命力は残されていなかった――社会環境、経済情勢もそれを許さなかった――。
閉塞した世界で、自分を守る為に全ての能力を費やしていたのだから――――。