豊富な資金と人脈を使い、大手芸能プロダクションの幾つかを買収し、永らく「生きる」事を停止していた者達を目覚めさせる環境作りを着々と進めた。しかし、市場の反応は驚く程に薄かった――。
「売れなかったわね――」
デビューシングルの出だしは低調だった――その頃の私は引き籠もっていたので、世間の事情などに関心などなかったし、彼女達の存在も知らなかった――。
しかし、砂漠の世界で息を潜め、心の奥底に希望を閉じ込め、絶望と偽りの日々を過ごしていた者達の魂は、ヴィーラヴを目の当たりにした事で、欲望と妄想のマグマは再び熱を帯びてゆき、「希望」を内包した花の匂いを察知し、ゆっくりと反応してゆく――。
ひと度、再起動した彼らの団結力と行動力は瞬く間にこの国全土に広がり、低迷していたセールス、配信が僅か3日足らずで久しく達成されていなかったミリオン超えを記録する。
「当時の社会環境がそうさせたのかもしれないわね――」
希望の「原石」は、その状態で光り輝く事はない。腕の良い職人に研磨され、美しい台座に脇石なる仕立ての良いドレスを身に纏って人々の憧れの対象となる――――。