花が咲き乱れていた世界を、ひたすら振り返り、懐かしむ事でしか、自分が自分であるという存在を証明すらできないのか――。
かつて、強固な一団を構築していたアイドル集団の突然の解体や、「国策」と揶揄された隣国の「使者」達が消え去ってから、幾年の歳月が流れたのだろう――――。
「気がつくと、アイドルという言葉さえ、もう死語になりつつあったわ――本当に辛い時期だったわね――」
「でもね――――」
希望の種は、強かに生き延び、慎重に根を張り巡らせて芽生え、幹を伸ばして葉を広げて欲望の蕾を膨らませ、遂には甘い蜜がたっぷりと詰まった魅惑的な香りと色彩を施した怪しい花を咲かせるに至る――。
ヴィーナス·ラヴラヴ――。
彼女達グループの正式名称である。
「失笑だったわね――」誰かに呆れる様に社長は笑い、言った。
芽吹き、花咲いた彼女達に業界が匙を投げた――。
「それでも、あの時の私は、根拠もなく強気だったわ――」
社長は、小さな投資ファンド会社を起業して、得られた果実を元手に現在のドロシーエンタープライズを設立し、ヴィーラヴを世に放った――。