幾つかの希望の種は蒔かれてはいた――しかし、花を咲かせるまでには至らなかった――。


 砂漠の世界は、「アーティスト」なる者達が支配し、頂点を極めていた――彼らにとって、点々と地表に芽生えた「アイドル」の種など何ら恐れるに足らない存在でしかなかった。


 「種」の発育を仄かに期待していた者達も、呆気なく摘み取られ、喰われてゆく光景を目の当たりにする度に希望を失い、己の殻の中に深く閉じ籠り、もう美しい花など咲く事はないのだと、希望を消去してゆく――。



「砂嵐はね、更に強く吹きつけたわ――」


 やがて、アーティスト達は種を喰い尽くし、遂には共食いを始め、ほんの一握りの強者のみが「市場」という砂の世界に辛うじて生き残った。


「ふふっ――でもね、市場にも砂漠は存在したのよ」

 憂い笑いの社長は、昔話を続ける。



 旧東欧圏を震源とした第1次欧州危機を経て、ロシア、フランスを中心とした第2次欧州危機は全世界に波及してゆき、世界経済は最も繁栄していた規模の3割程度まで縮小し、現在に至っても本格的な回復には程遠い状態に陥っている――。



「もう――駄目なのか――」