何が彼女をドロシーエンタープライズ―エンターテイメントの社長にまで「昇華」させたのか――。
決して自分から前に出るタイプではなかった舞の心でブレイクスルーしたものは何か――。
あの頃の彼女と、得体の知れない「自信」と「達観」しているかの様な現在の舞との凄まじい落差に私は戸惑い、ある種の嫌悪感さえ覚えるのだ――。
舞は私と同じ「匂い」がした――。
何処か自分の存在を軽く扱い、嫌い、自身の気配を消そうとする――。
資産家の一人娘であった舞を誰もが羨んだ――不安のない財力、端麗な容姿、男を擽るであろう躰――。
快活な性格ならば、間違いなくあの学院での地位は「完璧」で揺るぎない筈だった――。
しかし、そうはならなかった――。
あの学院のあの学年での「太陽」は決まっていた――。
私達はその「衛星」――。
舞に「その気」はなかった――目立たず、慎重に、慎ましく学院生活をやり過ごす――私にはそんな風に見えた――。
故に私とは「波長」が合ったのかもしれない――。
適度な交友関係――つかず離れずの「絶妙」な距離感――。
そんな関係性も、卒業を迎え終焉する――。