ヴィーナス―ツインタワー――。
熱狂の渦と、渇望し切った幾多の情念が南から北上し、北の地で「成就」した聖典から早二年半――。
初ライブツアー前から、ファーストタワーの隣接地を取得し建設を進めていたセカンドタワーが竣工し「ヴィーナスタワー」という通称が改められた――。
建設から竣工の間も、ヴィーラヴの地位は揺るがない――。
いや、揺るがないどころか私達には彼女らしか「縋る」対象と選択肢がなかった――。
人々は「復帰」の兆しさえ見えないシフォンの存在をとっくに忘れ、過去の「遺物」としての楽曲がこの世界の片隅に乱雑に棄てられた――。
アイドル戦国時代はもう過去の話――。
ヴィーラヴを脅かそうとする「種」は、ドロシーエンタープライズが「紳士的」に懐柔し、配下にする――。
誰も歯向かう者などいなかった――。
抵抗すれば「闇」へと葬られる――。
ヴィーナスツインタワーの「基礎」には、そんなアイドルや芸能事務所らの「怨念」じみた情が封じられ、固まり、タワーを支えているのかもしれない――。
高樹―舞――。
皇華月(おうかげつ)女子高等学院時代の同期生――。
彼女は、大きく「変貌」した――。