人間は、何処かに暗黒の自我を内包している――――偽人という自我を――――。
純粋と暗黒の自我が互いに語り合い、均衡を保つ事で、人間としての個性と品格を会得している――それは危うく、儚い――――。
暗黒の自我――――偽人へと堕ちるのは容易い――。
その逆は――――。
故に、シフォンに起こった現象は、奇跡といえる――――。
奇跡をあまねく人間達に行き渡らせるのは――――。
故の、我々の世界を終わらせるという事なのだろう――――。
「ラスト公演っ、皆っ気合い入れて行くよっ――――」
「ウォーッ――」
詩織が勢い良く言い、繋いでいた手を高々と天に突き上げると、全員が続き、叫んだ――――。
素晴らしい――――。
拍手や歓声を上げ、場を更に盛り上げるスタッフ達――――彼らとハイタッチを交わしながら、メインステージ袖口へと進むアイドール――――。
もう待ちきれないかの様に、アリーナ席からドーム全体に広がった歓声は、その音圧を高めながら、ヴィーラヴの降臨を待っている――――。