自らが人間である――――あろうとしている事に何の疑問も持たず、人間としての喜怒哀楽を全身で表現し、私達をも超越しようとさえしているアイドール達の無垢な反応が可愛いらしいのだ――。
悲しみながらも、メディアの質問に、懸命に語るべき言葉を探し、選択して真摯に受け答えしている姿を傍らから見ていると、不謹慎と感じつつも、躰が疼く――――。
何故、こんな「茶番」を演出してまでメディア、世間の関心をヴィーラヴに集中させなければならないのか――――。
シフォンの息の根を完全に止める為に必要な舞台だった――。
橋本 明子と彼女を愛したマネージャーはもう、この業界に戻る事はないだろう――――だが、彼女を使い、甘い果実を吸い続けた偽人達は、その実を失う訳にはいかなかった――。
とりあえず、無期限の休養を宣言し、頃合いを見計らい、派手な復帰を目論見、遂行しようとさえしていた――。
そうはさせない――――。
彼女に今必要なのは、輝くスポットライトでも、歌姫なる女王としての地位や名声、歓声ではない――――。
静かで、穏やかな時の流れ――。