スロットルを開放する――――強力なトルクが、未知の速度へと誘う――。




 吸いつく様に追走する詩織の車の光が、ミラーに映る――――。




「やるわね――――」



 アクセルペダルを更に踏み込む――。



「うわぁ――――」


 強烈な加速と、勇ましいエンジン音で目を覚ましたアリスや流花、葵、隣の雪達が嬉しそうに歓声を上げた――――。



 速度違反など気にしない――――後で、「どうにでも」できる事――確信はないけれど、きっとそうなのだ――今はただ、ステアリングから伝わる車の挙動を感じ、エンジンの鼓動を私の魂と同化させ、スロットルへと導く――――。



 追い越した車達が、彼方後方に消え去ってゆく――――。




「ふふふっ――――」


 もう――全く楽しくてたまらない――。



 私達の車は、再び朝日が昇り始めるまで、首都高速道路を疾走した――――。