しかし、二人は幸運だ――――偽人として長く生きるよりも、僅かな月日でも、濃密で愛に溢れた日々の営みの方が、人間として優れた人生だと思う――。
ヴィーラヴを喰うと言ったシフォンを私は、「抹殺」し、歌姫は華やかで、腐った舞台を降り、その座をヴィーラヴが継承する――――そして私も礼子さんから引き継ぐのだろう――狂気の継承を――――。
私の、それが役目――――それが、私の人生――――。
「さようなら――シフォン――――」
だが、再び私のアイドールの前に立ちはだかり、傷つける事があれば、それが橋本 明子の姿であれ、純真無垢な少女の姿であっても、私は躊躇なく「殺す」だろう――その事をよく憶えておくがいいわ――――。
「夜の高速でも、ドライブしない――」
「えっ――」
「後ろの詩織に連絡して――」
戸惑う雪に構わず、首都高速道路に繋がる車線へと車を導く――。
慌ててスマートフォンで、詩織車に連絡する雪――。
「わかった――ついてくって――」
雪から返事があった時、もう車は入口にさしかかっていた――。
本線と合流する。