急遽、スケジュールを変更して、コマーシャル撮影を明日行う事にも、せっかくの休みが潰された事にも、不満や怒りといった態度や表情を見せないアイドール達――――それどころかこの施設に前乗りし、また私やスタッフ達との泊まりがけの仕事を楽しみにしているかの様に、集まったスタッフ達と談笑している――。


 何と微笑ましい光景だろう――――当たり前だが、スタッフ達はアイドールを疑いもなく人間と認識し、接している――――それでいいのだ。素直な心でメイクを施し、衣装を纏わせ、記録に残す。アイドール達と苦しみ、喜びを分かち合いながら生きてゆく――――その時が訪れるまで――――。


 故に、スタッフ達には今を精一杯に生きて欲しい――――私のアイドールの愛を受けて――――。



「さぁ、上の階の宿泊施設に移動するわよ――」


 ロビーで談笑している皆に言った――「私は他に用事があるから――」と色気のある声で言った礼子さんは、別の施設棟へ消え、ここにはいない。


 詩織とキャロルアンを先頭に、女性スタッフ達とアイドールがエレベータへと乗り込み、移動してゆく――。


『枕投げ――枕投げっ――』