軽いタッチのピアノのメロディーが流れ出す――――そのプロローグを合図に、葵が伏せていた顔をカメラに向けて、切なく奏でられるストリングスを背景に男を誑かす「あの瞳」で台詞を語る――――。
葵―「好きなのに――切ないの――」
雪―「恋を重ねるのが――苦しいの――」
葵―「だから――素直になるわ――」
雪―「いつまでも、一緒にいたいから――」
葵と雪の間を縫う様に、後ろに控えていたアリスが静かに進み出て、悲しげな表情と潤んだ瞳でカメラを見つめながら、最後の台詞を切なく決める――。
「好きなんかじゃない――――愛してる――」
照明の光量が輝きを増して、ミディアムテンポのリズムと悲しいメロディーラインが交わる――――。
複雑なフォーメーションのダンスを舞い、妖艶で美しくも、しかしすぐにも破壊されそうな危ういバランスによって紡ぎ出される煌めく世界を待ちわびていた者達は、ようやく訪れた彼女達が展開する「夢物語」に陶酔してゆく――――。
私は――どうなの――。
「はぁ――――」
また、ため息をつく私がいる――――。