私の全身は、怒りで漲っている――。


 私の、私だけの世界で少女に言われた事を、現実の世界で早くも実践していた――。



 視線の先には、礼子さんがいる――私の、今にも礼子さんに飛びかかり、殴ってやりたいという衝動に満ちた私の眼にも礼子さんは動じる様子もなく、涼しい視線を私に返す。


「何をそんなに怒っているのかしら――」とでも言いたげに――。


 あの時、よろめいた私を受け止めたのは、礼子さんだった――――そして数分前、私の世界から帰還し、目覚めた場所も礼子さんの胸の中だった――。


 目が覚め、礼子さんを認識したと同時に、私の心は本能的に礼子さんを拒絶していた。


 己を拒絶され、距離を取った私に礼子さんは驚きもしなかった――――それよりも、今の今まで私に秘密にしていた事をいよいよこれから語るのが、楽しみでたまらないという顔の表情と涼しい瞳で、私の姿を映し出している――。




「ずっと――騙していたんですね――――私を」


 視線と視線の駆け引きが続く――――。



「そうだとしたら――――どうなの」


 軽く目蓋を絞り、口元を緩めて礼子さんは言った。