「あなたは――――」
少女は、花びらに埋もれたフロントウインドウを見つめ、何も言わない。
「何処から来たのですか――」
あまりに佇まいが凜としていた為に、少女に対して敬語を使い、問いかけていた。
少女の横顔を見つめる――。
葵やアリスと同世代だろうか――しかし、少女から放たれている生気は、幼さや狡賢さの類いではなく、永い時を生きた者が体得、会得した、知己と高尚さを兼ね備えた気と香りを醸し出している様に見えた――。
少女がゆっくりと私を見た。
蔑んでいるのか、憂いているのか、私をこの世界もろとも包み込もうとしているのか、微笑んでいるのか――万華鏡の様に変化する少女の眼と潤う瞳――。
この眼――この瞳――。
私は、少女と出逢っている――――この眼差しに――。
いつだったのか――記憶の糸を慎重に手繰り寄せる――。
糸の先に確かな感触がある――――ゆっくりと、丁寧に糸を手繰る――。
しかし、感触が急に軽くなり、記憶の糸が切れる。
いつもこうなのだ――――途中までは上手く手繰り寄せられる過去の記憶――。