私の運転する車は、ワインディングロードを疾走する――。
私の車ではない事は、すぐにわかった――――新たな世界の私はもう、泳いではいない。
黒の世界ではなかった。
道路の両側や、連なる山々には、桜が咲き乱れている――この風景が無尽蔵に続いてゆくかの如く、終点は見えない――。
曲がりくねった道を、上っては下る――ステアリングを右から左へ、左から右へ――スロットルを開放し、抑制する――シフトアップし、シフトダウンする――――。
一連の動作が、淀みなく繰り返し行われてゆく――。
ワインディングロードを抜け、平坦だが緩やかなカーブが連続する道を走り続ける――――いつしか、センターラインなど無視して走っていた。
わかっている――この世界も、存在しているのは私一人なのだ。故に対向車など、あろう筈もない。
自然とアクセルペダルを踏み込んでいる――目の前から新たな桜並木が現れては、後方へと消えてゆく終わりのない景色――。
全てが異なる形で枝葉を伸ばし、花びらの色も微妙に色調が違い、おのおのが存在を主張するが、風景全体の調和は不思議と保たれている。