右手に唯一の出入口が見えた――ゲートでチェックを済ませ、施設内を進む――。


 異業種の企業と政府が出資し合い、再びこの国の技術力、国際競争力を高め、あらゆる市場においての優位性と発言力を構築すべく、協同研究や技術開発、マーケティング及び人材交流を目的として設立された、財団法人の建築物が広大な敷地に点在している。

 建物と建物を繋ぐ様に、緑が美しく良く刈り込まれた芝生や、花々で彩られた庭園、池などが、ガラスで覆われた建物達に潤いを与える様に配されている――。



 ヴィーラヴは、財団法人の認知度を上げ、国民に関心を持ってもらう役目と、彼女達自身もこの財団が最初に国際市場に送り出す優良なコンテンツとしての戦略的役割を与えられ、それらをふんわり「包む」意味で、「親善大使」という肩書きを「賜り」、任命された――。


 実に、この国らしいやり方――――。


 明後日にはこの場所で任命式、記者会見、コマーシャル撮影が行われる。今日は詰めの打ち合わせと、「お偉いさん」達に挨拶をする目的の為で、礼子さんも遅れて私と合流する――。


 幾つかの厳重なセキュリティをパスしてゆく――。