これも私を認めたという証なのか――けれど、顔を横に逸らしてしまう。会社のトップを「礼子さん」と呼ぶ恐れ多さと、嬉しさが私の中で同居する。
「本当に真面目なのね、舞さんは――」
礼子さんは、更に親しい人間に接する表情と語り口に微調整して私に語りかけた――。
「ごめんなさいね。舞さんにもゆっくり休んでもらいたかったけれど、この仕事は今後、ヴィーラヴにも会社にも大きな発展が見込める案件だから、頼むわね舞さん――」
「わかりました礼子さん――私の事は気になさらないで下さい――」
明日から2日間、スケジュールをキャンセルして、ヴィーラヴに休みを与えた礼子さんは、申し訳なさそうに言った。
打ち合わせは明日だけ――明後日は丸1日休める。いや、本当は休みなんていらない――礼子さんに期待されているのが嬉しいから――。
「これからも、彼女達をよろしくね――」
「はい――――」
デスクの電話が鳴った。
にこりと笑って席を立ち、礼子さんは受話器を取る――――先程の相手とは話し方が違い、穏やかな口調。私は察して席を外す事にした。
「私は失礼します」