ドロシーエンタープライズでは、ヴィーラヴに携わる者は全て社員として雇用契約している。

 彼らのみが、ヴィーラヴの歌を録り、振りをつけ、メイクを施し、服を着せ、撮影する事を許される――フリーのクリエイターは一切、ヴィーラヴとは係われない。


 故に、優秀なクリエイターは社長がたっぷりと果実を与え、とっくに社員にしてしまっているが――。




「満足しています――」

 あるクリエイターが待遇をそう表現した――他のクリエイターも同意見だという。


 充分な額の報酬と、ヴィーラヴに携わる充足感と自らの才能を表現する「誇り」――そして、ヴィーラヴの活動に支障のない時間と日程においては、フリーとして活動する事も黙認されている――。


 優秀なクリエイターと最新の設備が施されたヴィーナスタワー。彼らの才能とタワーの設備があれば、ヴィーラヴは何処にでも出現する――地下のスタジオでブルーバックのセットの前で水着で横たわり、撮影するだけで、沖縄、グアム、ハワイ等の背景素材を用い、肌にかかる水滴や汗さえも細かく加工され、あたかも現地で撮影されたと見紛う出来映えの映像、写真が完成する――。