春が来て、ありは巣穴の外に出ました。

きりぎりすの死骸を見つけたので、解体して食料庫に運び入れました。

それからも働いて、働いて、働き続けました。

そしてある日、ついに動けなくなりました。

自分は死ぬ。

ついに来たか、と思いました。

思えば、働くだけの生涯でした。

自分は立派な大人だった、それだけは誇りです。

薄れていく意識の中で、ありは呟きました。


「やっと終わった。疲れたなぁ。」


自分が働いてきた事で、次の世代の基盤ができた。

自分の代わりに、子供達が立派に仕事をしてくれる。

「なんだか寂しいなぁ。」

ありの死骸はきりぎりすと同じように巣穴に運び込まれ、死後も仲間たちの支えの一つとなったのでした。






ー終わり