「恋の寿命は四年なんだって。」
海と向かい合う古びた堤防。
そこに腰掛けた誠は前を向いたまま、そう言った。
「…じゃあ四年たったらあたしたち、別れちゃうってこと?」
潮風のせいで、鼻の奥がツンとする。
でもその感覚は嫌いじゃない。
誠がその香りを好きだと言うから、あたしもそのしょっぱい香りが好きだった。
「いや、そういうわけじゃなくて。別の形に、変わるんだと思う。」
「…別のかたち?」
「うん、例えば」
──愛 とか。
誠は、こういう男だ。
例えば胸焼けするような甘い言葉だって、頬を少しも染めることなくサラリと言いあげてしまうのだ。多分。
二人の隙間を縫うように、潮風が吹き付ける。
その風は、穏やかな波の音を連れていた。
「…好きだな、この音」
隣で小さくそうこぼして、誠は目を細める。
ザザン、ザザン。
規則正しいそのリズムは、いつもと変わらずあたしたちを包み込む。