「ずるいよ、ヒサは」

「そうかな?」

顔を上げずに呟く千秋に対し、随分と涼しげに尚は言う。

「そうだよ……、そんなこと言われたら……」

語尾が震える千秋の背中を、ゆっくりとさすった。
涙で、ぼんやりと視界が滲む。

ありがと、尚。

心からそう思った。