「……っ……」

「なんで、真知が泣くんだよ」

我慢していた涙が、零れる。
くしゃりと、あたしの頭を撫でながら千秋が苦笑した。

「だって、あたし……」

「嬉しかったよ」

「え?」

千秋の声は優しい。あたしは涙を止めることも出来なくて、絶対不細工な顔で千秋を見上げる。

「俺なんかのために、純子に啖呵を切ってくれて」

思い出したようにクスクス笑う千秋に、カッと顔に血がのぼる。
尚の周りには、潰された缶が3本。

気づかないうちにどんだけ一人で酒飲んでんだ。

「ヒサ、飲み過ぎじゃ……、」

「飲まなきゃやってられない」

千秋は心配そうに声を漏らしながら、酒を取り上げようと手を出せば、尚がぴしゃりと叩き落とす。
痛そうにさすりながら、文句を言おうとする千秋を、尚は真っ直ぐに見据えた。