「さすが、ヒサだなあ。全部、お見通し?」

「当たり前」

「そっか、そうだな。うん……ヒサの言う通りだよ……。俺、逃げてる。怖いんだ」

ぽつりと、千秋が言った言葉はあたしの胸を深く抉った。

「千秋……」

どうしよう、あたし、全然わからないよ。
なんでずっと一緒にいたあたしよりも、尚の方が千秋を理解出来るの?

凄く悲しくて、凄く、悔しい。

「怖いし、……もう信じることが面倒くさい」

ようやく見つけた特別な純子に、こんな事をされたのに彼女を好きだという気持ちは消えてくれない。心底恨む事も出来ない自分。きっとこんなことはこれからも当たり前の様に訪れる。

そして、その時も責める事さえ出来ず、代わりにまた自分自身を傷つけるのだ。

千秋の本心。悲しみと、絶望に塗れた千秋の言葉が痛い。
どうして言ってくれなかったの、なんて千秋を責められるはずもなかった。