「千秋が純子を責めないことは知っていたよ、あんたは良い人だから」
「尚、何を言うつもり……」
「真知は黙ってろ」
尚は一喝する。
静かな怒りに、千秋はどうしていいかわからないようだった。
「自分で自分を追い詰めて満足なの」
「そんな訳じゃ、だって俺は」
「なんでここに来た?いい加減自分を誤魔化すのをやめる為だろ。いつまで善人気取りでいるつもりだよ」
きっぱりと言い切った。
誤魔化す、千秋が……、一体何を?
「怖くなったって言えば」
「……っ!」
千秋が必死に浮かべていた笑顔が消えた。
「ここでなら、我慢しなくていいっていったろ」
「ヒサ……、俺……」
「千秋が逃げたかったのは、椎名純子からじゃない」