ぽつり、ぽつりと、言葉が紡がれる。
あたしと尚は、それに黙って耳を傾けていた。

「きちんと純子に向き合いたくて、でも、話せば話すほど、純子が分からなくなった。終いには、もう嫌だって……、逃げたいなんて」

「千秋、別にそれは」

「真知達にさんざ酷いこと言って、それでも来てくれた時さ、ほんとに泣くかと思った」

悲しそうに笑った。ここ、全然笑うとこじゃないよ。

「俺、今まで自分がされて嫌だった事を全部純子にしたんだ。本当に、最低過ぎてどうしようもない」

人の行動を読んで計算して気持ちを弄ぶような子なんだよ、純子は!そんな本性を受け入れられないからってどうして千秋が悩む必要があるの!

叫んでしまおうかと思った。

でも、それを言ったからといって「そうだよな、どっちかっていうと俺被害者だよな」なんて簡単に考えられるほど、いつも単純なくせに、単純じゃない千秋なんだ。

「……言いたいことはそれだけ」

「ヒサ」

無表情で見据える尚に、千秋は小さく目を見開いた。