「千秋は、何も悪くない!だって、千秋は知らなかったんだもん。純子達が裏でどんなに……」
「真知」
思わず声を荒げたあたしを遮ったのは、尚だった。
言うな、尚の目はそうあたしに告げる。
「俺、純子と言い合いになったあの後、すぐに真知達の後を追った」
「え?」
「純子を振ったも同然だろ?話も途中で、止める彼女を振り払って、あんな処に置き去りにしてさ」
自己嫌悪に苦しんでるみたいだ。くしゃりと茶色の髪を左手でかきあげる。
「ヒサが、」
「……」
「ヒサが純子に言った言葉。もっと俺の中身を見てくれって言ってくれた時、気づいたんだ」
「何に?」
いつもの様に棘がない、尚の声音はどこか人を安心させる。
アルコールの所為か、余裕のない心の所為かはわからないけど、千秋の少し潤んだ瞳が小さく揺れる。
「俺だって純子の表しか見てなかった」