ついに沈黙に耐えられなくなったあたしは、ライターとシガレットケースを取り出そうと鞄に手を伸ばす。すると尚が、ペチっとあたしの掌を叩いた。

「……痛い、何すんの!」

「この部屋は禁煙。我慢しろ」

「絶対嘘でしょ!灰皿あるじゃん!!」

そういえば、尚は人が煙草を吸うのが嫌いなんだ。我侭だから。
口をつけていた缶ビールを、尚がことりとテーブルに置く。

「千秋は」

「ん?」

「ここでなら、もう我慢する必要もないだろ」

千秋は驚いたように目を見開く。
我慢、て何?あたしはわからなくて千秋を見つめる。千秋は顔をくしゃりと歪めて泣き笑いのような表情を浮かべた。