「なあ、ヒサ……!」

千秋は、今にも泣き出しそうな顔で尚の両肩を掴んだ。尚はいきなりのことに驚いて、目を丸くしている。

「俺、どうしたらいい」

「……ちょ、離して。どうしたらって何がだよ」

「最低すぎて」

尚は必死に千秋から離れようとしているけど、肩は掴まれたまま。
眉間に皺を寄せて、千秋を睨み上げる。

「なにがいいたいんだよ。ていうか、離れて」

「ご、ごめん……」

千秋の傍から尚は離れて、牛革のソファに腰をかける。
千秋は尚のご機嫌をとるように、珈琲を淹れて、紗雪先輩が隠していた高級クッキーを並べ始めた(バレたら絶対怒られるぞ、千秋のやつ)