……千秋のことも。

「でも、まだちゃんと落とせたかどうかは、自信ない」

「何言ってんのよ、純子。らしくないなあ」

「……だって、千秋君。いくらでもふたりきりになるチャンスはあったのに、全然"そういうこと"言ってこないんだもん」

「意外に奥手なんじゃない?可愛ーい!でも、どうするの?告白されたら。オーケーするの?」

「うーん。どうしようかしら…」


背筋を、嫌な汗が伝う。
嬉しそうで、でも、どこか思いつめた顔をしていた千秋が脳裏に浮かんだ。

"告白"なんて、そう遠い未来じゃない。


あたしは、どうしたらいいの。
このまま扉を開けて、あの可愛らしい顔を思い切り引っ叩いてやりたい。けど、それをしたところで、彼女達が止まるとは思えなかった。


「実はね、…最近、尚君も気になってるんだよね」

「うわあ、純子ってば怖ーい!」

「そしたら、純子に振られて落ち込む千秋君に、わたし取り入ってみようかなあ」


きゃはは、と甲高い笑い声が研究室に満ちる。

足の先からピリピリと冷えて、まるで体全身が凍り付いてしまったように動かない。気を抜いたら、倒れてしまいそう。