「やっぱり、男なんて単純よね」

耳を疑った。
鈴の転がるような、愛らしい声でそう言ったのは間違いなく純子。
そのくっきりとしたアーモンド型の目元をそっと細めて、にこりと微笑んで、そして。

「千秋君も、あとちょっと」

純子が言い放つそれを、あたしはすぐに受け止められないでいた。
ただ、どくどくと脈打つ心臓の音が酷くうるさい。純子は、一体どうしてしまったのだろう。

だって。
いつもは、そんな風に笑わないでしょう。あたたかくて、優しくて、人の悪口なんて絶対に言わない。

「わたしが言ったとおりになった。あそこで、純子が優しくしてあげたから、千秋君は純子に落ちたのよ」

「違うわよ。ほら、こないだあった野外イベントの時、千秋君とうまくふたりきりに出来たでしょ、絶対あの時だってば」


楽しそうに笑う。
あたしは、自分の指先が小さく震えているのに気づいた。ぎゅっと掌を握り締めるけど、それがおさまることはない。

騙してたの?
そうやって、三人で話のネタにして、笑って、人の心を弄んで。