ガシっと、千秋は力いっぱい尚の両手をとった。
思わぬ反応に、尚は目を丸くして千秋を見つめる(……うわ、珍しい)

「ありがとう、ヒサ!」

「は?」

「初めてだ……、そんな風に言ってくれたやつ。大抵は皆、残念そうな顔をそっと隠そうとすんのにさ」

感激した様子でにこりと微笑む千秋に毒気を抜かれた様子の尚は、怪訝そうな顔をしつつも小さく頷いた。

「……どういたしまして」

ふい、と視線を千秋から外した尚がぽつりと呟いた。あまりの予想外の反応に彼も少し動揺しているらしかった。

「嬉しい。ヒサと友達になれてよかったなあ、俺」

にこにこと笑いながら、はっきりとそう言った。
千秋は、そう。どんなときでも、飾らずストレートに言葉を紡ぐ。それが、あたしはずっとずっと羨ましかった。照れ隠しに、憎まれ口しか叩けない自分自身と、何度比べてしまったことだろうか。

そんな千秋に、尚はその綺麗な顔になんの感情も乗せないまま、ただジッと黙っていた。